滑床渓谷と広島の三段峡を比べると三段峡は雄雄しく男性的、滑床渓谷は優しく女性的と言えるだろう。
紅葉には少し早いし、平日とあって観光客の姿は見えない。
万年橋の袂から遊歩道に入る。ここはまだ紅葉していない。石畳の道を少し歩くと滑床らしい滑(なめら)を水が
気持ち良さそうに走っているのに出会える。この滑(出会い滑)も随分長い。有名な「雪輪の滝」までは約40分
一般観光客はほとんどここまで。この滝の全長は300mあり、見えているのはその内の80mだそうだ。滑床では
滝までも「滑の滝」のようだ。
雪輪の滝を過ぎると石畳もすこし荒れてくるが歩くのにはまったく問題はない。万年橋から1時間、広い千畳敷
の岩の上で休憩する。千畳敷を過ぎると観光から登山の領域に入ってくる。頼りにならないトラロープを頼りに
小さな滑の滝を渡ると滑床小屋分岐の標識がある。川を渡る橋が流されているので流れの狭くなったところを
飛び越え、小屋を訪ねてみるが一般には使用できないようだ。
次の渡渉地点は三ノ俣、滑を流れる早い流れを飛び越し、樹林の中を行くと奥千畳の標識がある。千畳敷の
ような広い岩は無く、標識が無ければ見落とすところだ。標識からすこし行くと「熊のコル」(三本杭)への道が
左に向かっているのがわかる。我々はさらに渓谷を探索すべく、トラロープのところから沢を渡り奥に進む。
荒れた道には立派な標識が建っているが人の歩いた気配は無い。20分ほど歩くと道は崩落して滑の滝に
なって途切れていた。以前は「鹿のコル」に通ずる道だっただろう。
滑床から三本杭に登るコースにこんな渡渉地点があるとは。渓谷の水量が多いと果たして渡渉出来るのだろ
うか? 鹿のコルからのコースに比べれば、はるかに厳しいように思われた。 |